経済産業省の指針に基づいて
秘密保持契約の内容を
検討してみたいと思います。
①対象となる情報の範囲について、
秘密の内容を具体的に示さない就業規則は
秘密管理性を充足するものにはならないとする
判例があります。
特定の方法としては、
◇「○○に関するデータ」など
情報カテゴリーによって概念を特定するもの
◇「X社から提供されたファイルYのうち
○ページに記載された情報」といったように
媒体を特定するもの
◇情報そのものを記載する方法
があげられます。
②秘密保持義務及び付随義務に関しては、
◇営業秘密が記録された媒体の
複製・社外持ち出し・送信の禁止
◇営業秘密の適正な管理及び管理への協力
◇退職の際における営業秘密記録媒体
(複製を含む)の返還
が挙げられます。
③例外規定を必要とするのは、
必要性・合理性がある範囲に限定して
秘密保持契約の有効性を高めるためです。
例えば、
◇開示前からすでに公知であった情報
◇開示後に受領者の責めに帰すべき事由なく
公知となった情報
◇第三者から守秘義務を課されることなく
取得した情報
があげられます。
④秘密保持期間については、
可能な限り期限の設定を設けるべきとされています。
それが困難である場合は、
(営業秘密性が失われるまで)
無期限と明記することになります。
⑤義務違反に対する措置としては、
損害賠償請求については明記するのが一般的です。
なお、仮にこれを明記しない場合でも、
不正競争防止法の適用があるときは、
差止請求、損害賠償請求、信頼回復措置請求が
認められます。
ただし、労働基準法上、
違約金を定めたり、損害賠償額を予定することは
禁止されています。
営業秘密の保護 の一覧
では、どのような点を意識して、
秘密保持契約を締結すればよいのでしょうか。
まず、就業規則に、
一般的な守秘義務を盛り込んでおく必要があります。
昨今の個人情報保護の流れからも
この点は必須といえます。
しかし、これまでお話ししたとおり、
不正競争防止法によって保護される
「営業秘密」はかなりレベルの高いものです。
したがって、
事業者にとって、特に保護されるべき情報を
特定して、守秘義務の対象にしておくべきなのです。
経済産業省の新指針においては、
①対象となる情報の範囲
②秘密保持義務及び付随義務
③例外規定
④秘密保持期間
⑤義務違反の際の措置
が秘密保持契約の内容として例示されています。
「営業秘密」として保護されるための3つ目の要件は、
「非公知性」です。
その情報が刊行物等に記載されていないなど、
保有者の管理下以外では、
一般に入手できない状態に
あることが必要です。
つまり、
書物や学会発表などから容易に引き出せることが
証明できる情報は、非公知とはいえないのです。
他方、
人数の多少にかかわらず、
その情報を知っている者に
守秘義務が課されていれば、
非公知といえます。
続いて、「営業秘密」の要件の2つ目、
「事業活動に有用な技術上または営業上の情報」
であること(有用性)について検討します。
有用性が認められるためには、
その情報が客観的に有用であることが必要ですが、
企業の反社会的な行為などの公序良俗に反する
内容の情報は有用性が認められません。
つまり、
□競争優位性を基礎づけるもの
□事業に活用されたり、使用することによって、
費用の節約、経営効率の改善に役立つもの
□将来の事業に活用できる情報
□ビジネスにとって間接的な価値のあるもの
(ある方法を試みた場合の失敗の知識や情報など)
があげられます。
ただし、製造段階に入っている情報と、
試験段階に過ぎないものとでは、
前者、つまり商品といえるものの方が
「有用性」ありと判断される可能性が高いといえます。
公序良俗に反するものとしては、
□犯罪の手口
□脱税手法
□麻薬・覚せい剤等の金製品の製造・入手方法
などがあげられます。
不正競争防止法で保護される「営業秘密」の要件
を見ていきたいと思います。
まず、
1 秘密として管理されていること(秘密管理性)
秘密管理性が認められるためには、
その情報を客観的に秘密として管理していると認識できる
状態にあることが必要で、
①情報にアクセスできる者を特定すること(アクセス制限)
②情報にアクセスした者が、「それが秘密である」と
認識できること(客観的認識可能性)の2つが要件となる
とされています(指針)。
つまり、
■アクセスできる人が限定され、
権限のない人によるアクセスを防ぐような手段が
とられていること
■アクセスした人が管理の対象となっている情報を
それと認識できるような状況になっていること
また、アクセス権限のある人が、
それを秘密として管理することに
関心を持ち、責務を果たすような状況になっていること
■それらが機能するように組織として
何らかの仕組みを持っていること
となります。
具体的に判例に照らしてあげられた例を見ると、
①に関して、
□アクセス権者の限定
□施錠されている保管室での保管
□事務所内への外部者の入室の禁止
□コンピューターへの外部者のアクセス防止措置
□システムの外部ネットワークからの遮断
□電子データの複製等の制限
②に関して、
□「秘」の印の押印
□社員に対する「秘密管理責務」の教育
□就業規則における秘密保持義務についての明確な規定
□誓約書や秘密保持契約による責務の認定
このように見ると、「秘密管理性」は
かなり厳重な対策がとられた場合に限定されることが
わかります。
改正不正競争防止法の施行に併せて、
経済産業省が営業秘密管理指針(改訂版)を
公表しています。
事業を営む上での「秘密」「ノウハウ」は
どの企業にもあるのですが、
不正競争防止法で「営業秘密」として保護されるためには、
いくつかの要件があり、
かつ、かなり厳しいと言えます。
刑罰や民事上の差止めといった手続を
もって保護すべき秘密は、一定以上のレベルのものに
限る趣旨だといえます。
その要件は、次のとおりです。
1 秘密として管理されていること(秘密管理性)
2 清算などの有効な技術や情報であること(有用性)
3 一般に知られていないこと(非公知性)
平成17年11月1日、
改正不正競争防止法が施行されました。
改正法では、営業秘密の保護が強化されています。
①国内で管理されていた営業秘密を
海外に持ち出して使用等した者
②在職中に、第三者と営業秘密の受け渡しなどを約し、
これに基づいて、退職後、
不正に営業秘密を開示等した者
③他社の営業秘密を不正に取得し使用したような場合、
従業員のみならずその従業員が所属する法人
が刑罰の対象に加えられました。
また、
④営業秘密侵害罪の法定刑が、
5年以下の懲役または500万円以下の罰金に
引き上げられ、
⑤法人については、最大1億5000万円の罰金刑が
科されることになりました。
ただ、不正競争防止法で保護される「営業秘密」は
かなり厳格な要件のもとでのみ認定されるのです。


