
人が、その活動時間の半分を過ごすのが「職場」です。最近、その職場でのトラブルである「従業員関連のトラブル」に関するご相談が増えています。
例えば、
そして、元従業員の対応としては、
これらの問題は、放置することにより深刻化する傾向にありますので、早期に適切な対応をとることが重要です。
労働基準法には労働時間の限度が定められています。
原則として、1週40時間以内、かつ、1日8時間以内とし、休日を1週に1日以上与えることとしています(労働基準法第32、35条)。
従業員を時間外労働に従事させるには、法律が定める手続が必要です。すなわち、
従業員を時間外労働に従事させるための法律が定める手続を経たとしても、時間外労働をさせた場合には、時間外手当の支払いが必要です(労働基準法37条、労働基準法施行規則第19,20,21条、労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。
【時間外手当の法定率は、】
時間外労働 → 1.25(時給1,000円なら1,250円)
時間外が深夜になるとき → 1.5(時給1,000円なら1,500円)
休日労働 → 1.35(時給1,000円なら1,350円)
休日が深夜になるとき → 1.6(時給1,000円なら1,600円)
時間外労働が長時間となれば、時間外手当がかなりの金額となり、従業員がこれを「未払賃金」として請求するケースが多発しています。
以前は、退職にあたって労働者が事業主に対して請求する事例が多かったのですが、最近では、在職中に未払賃金として請求する事例が少なくありません。
監督若しくは管理の地位にある者(管理監督者)については、労働時間・休憩・休日の規定が適用されないため(労働基準法第41条第2号)、割増賃金の支払いは不要です。
ここで、“管理監督者”とは、一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者と解されますが、名称で決定されるものではなく、実態に即して判断すべきものとされています。
裁判例では、「経営者と一体となって経営を左右するような仕事に全く携わっているかどうか」が検討されます。
そして、
といった事情(静岡地裁昭和53年3月28日判決)があることを理由に、管理監督者には当たらないとする裁判例も多数あります。
現段階で未払残業問題が生じていない職場においては、今後もこのような問題が起こらないよう、対策を講じておくべきでしょう。
具体的には、
などが考えられます。
懲戒の内容は、企業ごとに呼び方も異なることがありますが、主に、懲戒解雇、出勤停止、減給、譴責(けんせき)といったものが挙げられます。
懲戒処分は労働契約にその根拠があり、就業規則などに定められている範囲で行われることになります。
したがって、まず、懲戒の事由と懲戒の内容が就業規則に明記されている必要があります。逆に言うと、明記されていなければ懲戒処分はできず、また、現在明記されていても、明記される前の事実に対しては、懲戒処分を行うことができないこととなります。
懲戒の事由は、どの企業にも共通する、職務懈怠、命令違反、業務に支障を与えたこと、不正行為などのほか、企業の特性に応じた事由も考えられます。
裁判例によると、就業規則の懲戒条項にも、一事不再理の法理は妥当するとされています(大阪地判昭45.11.19)。すなわち、1つの懲戒事由について、重ねて懲戒処分はできません。ただし、再び懲戒事由に当たる行為がなされたときは、過去に懲戒処分がなされていたことを事情として、後の懲戒処分を重くすることはあり得ます。
解雇の項でご説明しておりますとおり、懲戒解雇処分は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められなければ無効となってしまいます。軽微なものであっても、非違行為や職務懈怠を繰り返し、何度も懲戒処分を受けていたことは、解雇の相当性を裏付ける事情となり得ます。
したがって、労働者の命令違反や職務懈怠が見受けられたときは、それを放置することなく、都度、適正な懲戒処分を行っておくという意識も必要でしょう。
解雇の種類としては、懲戒処分の一つとしての懲戒解雇、懲戒処分ではない通常の解雇、経営が苦しくなった場合に行われる整理解雇があります。
解雇には、形式的なルールと実質的なルールがあります。
懲戒解雇について、就業規則が定める懲戒解雇の事由に該当したとしても労働基準法に規定する解雇予告又は解雇予告手当の支払は必要となります(労働基準法第20条)。ただ、懲戒解雇の事由が、職場での犯罪行為(盗取、横領、傷害等)による場合などは、解雇予告又は解雇予告手当の支払は不要となりますが、労働基準監督署長の認定を受ける必要があります。
整理解雇については、判例により、次の「4要件」が必要とされています。
整理解雇の有効性が法廷で争われるときのハードルはかなり高いといえます。
男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)は、職場における性的な言動に起因する問題について、事業主に雇用管理上必要な措置を講じるよう義務付けています(11条)。
性的な言動に起因する問題のことを指し、「対価型」と「環境型」に分類されます。
以上のように、意に反して身体に触れたり、性的な関係を強要したりしなくても、意に反する性的な言動自体がセクシュアルハラスメントとなりえます。
セクシュアルハラスメントに当たるのは、その労働者の「意に反する場合」ですから、やはり、その言動を受けた労働者の主観(気持ち)が重視されますが、一定の客観性を持たせるため、「平均的な女性(男性)労働者の感じ方」を基準として判断されます。
事業者が講ずべき措置については、厚生労働省の指針(事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針)において9項目示されています。
職場の上下関係を背景としたいじめ、嫌がらせ、暴行、違法行為の強要などを指す「パワーハラスメント」という言葉をよく耳にするようになり、ご相談も多くなりました。
過去にパワーハラスメントと指摘された事例を挙げてみますと、
看護助手(21歳)が自殺したのは、職場の先輩(27歳)のいじめが原因と認定された。いじめの内容は、日常的な使い走り、「死ね」などと罵倒、「君のアフターは俺らのためにある」、「殺す」などのメールを送付、落ちた食べ物を食べさせる等。
病院は、いじめを防止できなかった点について損害賠償責任を負うが、自殺に発展することまでは予見不可能であったとして、慰謝料500万円の支払い義務を認めた。
医療情報担当者(MR)の自殺について労災認定がなされた。
精神障害に陥った原因となる上司の発言として挙げられているのは、
近時、労働者のメンタルヘルス(心の健康)ケアが重要視されています。職場には労働者自身では解消できないストレス要因が存在し、パワーハラスメントもその一つです。事業者は労働者の健康の保持増進を図る義務(安全配慮義務)があるため、パワーハラスメントを放置することにより、労働者がメンタルヘルスを害した場合は、労働者から、安全配慮義務違反を理由とする損害賠償(慰謝料)請求を受けることがあり、そのような事例も増えています。
業務上の事由(業務災害)又は通勤(通勤災害)による労働者の負傷、疾病、障害又は死亡等に対しては、労災保険制度により保険の給付を受けることができます。労働者であれば、常用雇用、日雇、アルバイト、パートタイマーなどの雇用形態は関係なく受給権が生じます。
労働者が労働災害により休業・死亡した場合は、所轄の労働基準監督署へ労働者死傷病報告を提出しなければなりません(労働安全衛生法第100条、労働安全衛生規則第97条)。故意に報告を怠ったり、虚偽の報告をすること(労災隠し)は、犯罪として立件されることがあります(労働安全衛生法第120条第5号)。
なお、労働災害について、事業者に責任がある場合は、労災保険でカバーされない労働者の損害について、賠償請求を受ける可能性もあります。
近時は、仕事のストレスから精神障害になったとして労災申請がなされるケースが急増しており、事業者にとっては、メンタルヘルスケア対策が急務となっています。