
債権をより確実に回収するためには、「取引開始前」「取引中」「危機発生時」の各時点での対応に注意が必要です。
新規取引を開始する際には、取引先の信用力を調査し、これに基づいて、取引条件(取引額や支払サイトなど)を検討します。
法人と契約すれば、その取引の当事者は法人となります。法人はその代表者とは別個の存在ですから、法人が契約の当事者であれば、原則として法人に対してのみ請求が可能です。
逆に、個人が契約の当事者であれば、原則として個人に対してのみ請求が可能です。
つまり、その取引先が破綻し、会社名義の財産がなく、めぼしい財産が全て個人名義であった場合、原則として、それらの個人財産に対して追及することはできないということです。
個人の場合は、屋号で営業している場合など、その個人名が明らかになっていないこともあります。
「屋号 + 個人名」での契約書を作成するルールにしておけば、自然と個人名も明らかになります。
信用調査として、信用情報会社の有料サービスを利用することはもちろん有用です。ただしある程度は独自に調査することが可能ですので、そのポイントについて、確認しておきましょう。
【取引申込書で確認する内容】
取引を始めた後に配慮していただきたいのは債権の管理です。
取引開始時に関わる営業部門と、取引開始後を担当する経理部門との狭間で、未収が放置されるケースがあります。債権の未収が発生した場合は、すぐに営業部門に報告され、支払計画の提出要請のほか、取引条件の見直しや取引停止の措置が取れるようにしなければなりません。
営業部門では、取引先を訪問する機会を利用し、不安の兆候がないかを確認していただきたいです。中には、取引先の従業員との日常的な会話から得られる情報もあるでしょう。
売上金の入金を確認し、未収が発生していれば速やかに催促等の手続をとるようにしましょう。
取引先から任意の支払いがなされない状況に至れば、直ちに債権の保全を検討しなければなりません。
この時点で、取引先の協力が得られるようならば、担保の取得や代表者や第三者の個人保証などを試みます。
担保の対象となるのは、不動産に限定されません。取引先が持つ売掛債権や在庫商品を担保の対象にすることも検討してください。
しかし、取引先に協力的な姿勢が見られない場合は、次のような債権保全策を検討しなければなりません。
相殺は、相互に仕入があるときに有効です。取引先から自社に対する債権と、自社から取引先に対する債権とを相殺することにより、実質的に債権を回収したのと同じ利益が得られます。自社又は取引先のグループ会社と取引がある場合は、この相殺を利用して債権回収に役立てることもできます。
取引先に代わって、自社が第三者から支払いを受けるようにしてもらうとか(代理受領)、自社で販売できるものがあれば、取引先の在庫商品を債権の弁済に代えて引き受けること(代物弁済)も検討してください。
売掛金等の不払いに対して強制執行するには、あらかじめ公正証書を作成しているか、訴訟を提起して判決をもらわなければなりませんが、訴訟を提起して判決をもらうためには、数か月を要しますので、その間に、取引先の財産が失われてしまう恐れがあります。そこで、検討するのが仮差押えです。
仮差押えは、判決を得た後の強制執行のために保全をしておく制度ですが、仮差押えが成功すれば、それをきっかけに任意の弁済を受けることも多いのです。
仮差押えは、取引先の財産を特定して行う必要がありますので、財産に関する情報が判明しなければ仮差押えはできません。このとき、取引開始時に入手した「取引申込書」の情報を活用できるのです。