
相続
相続とは、ある人が亡くなった場合に、その人の財産を受け継ぐことであり、その意味自体は難しいものではありません。
しかし、実際の相続の場面では、たくさんのトラブルが起こりうるのです。
相続問題事例
- 相続人が誰だが分からない。相続財産として何があるか分からない。
- 相続人が複数おり、誰がどの財産を取得するのかが決まらない。
- 相続人が複数おり、誰がどの財産を取得するのかが決まらない。
- 相続人の中に、被相続人の生前に、被相続人から多額の援助を受けている者がいるので、法定相続分で分けると不公平になる。
- 相続人どうしが争うのは困るので、遺言を作成しておきたい。
- 父が遺言を残しており、私には一切財産を与えない内容になっていた。
- ① 相続人が誰だが分からない。相続財産として何があるか分からない。
- →相続人や相続財産の調査を行います。
→相続人が明らかになれば、法定相続分に従い、ご自身の相続割合が判明します。
→負債が大きい場合には、相続放棄を検討しなければなりません。
- ②相続人が複数おり、誰がどの財産を取得するのかが決まらない。
- →相続人どうしの話し合いが必要となります。
→話し合いがうまく行かない場合は、家庭裁判所の調停(遺産分割調停)で協議することになります。
- ③介護に尽くしたり、事業の発展に貢献したので、それに見合う財産をもらいたい。
- →「寄与分」の問題です。相続人間の話し合いで、その貢献を認めてもらえない場合は、家庭裁判所に対し、「寄与分」を認めてもらうための手続をします。
- ④相続人の中に、被相続人の生前に、被相続人から多額の援助を受けている者がいるので、法定相続分で分けると不公平になる。
- →「特別受益」の問題です。被相続人から相続人に対してなされた贈与の額を、相続財産に加算して、各相続人の相続分を計算することを指し、「特別受益の持戻し」といいます。
- ⑤相続人どうしが争うのは困るので、遺言を作成しておきたい。
- →遺言作成のルールを押さえましょう。
- ⑥父が遺言を残しており、私には一切財産を与えない内容になっていた。
- →遺言は、被相続人の遺志を表すものですので、最大限尊重されます。ただ、一定の相続人には、遺言によっても奪われない部分があります。これを遺留分といいます。
[相続関係調査]
遺産分割の話し合いをするためには「相続人が誰か」を確定する必要があります。相続人全員が明らかにならないと、各相続人の相続割合が決まらないためです。
また、相続人でない人と話し合いをしても無意味ですし、他方で、相続人が欠けているとそれまでの話し合いが無駄になってしまうこともあるため、相続人の調査は重要です。
具体的には、亡くなられた方(被相続人)の戸籍をたどって、親族関係を明らかにしていきます。
被相続人が亡くなられてから時間が経ってしまっているケースや、被相続人が養子縁組や離婚しているために身分関係が変動している場合など、全く交流のなかった方々が相続人として判明し、その人たちとの遺産分割協議が必要となることも少なくありません。
[遺産分割協議 遺産分割調停・審判]
トラブル事例
- 3人兄弟で、亡くなった父の自宅の取得を全員が希望しているケース。
- 兄弟どうしが不仲で、話し合いが難しいケース。
- 子どもがいないご夫婦のケースで、夫が亡くなり、疎遠になっている夫の兄弟が相続人となるため、話し合いのきっかけが持てないケース。
相続人が複数いる場合は、遺産の分け方に関する話し合い(遺産分割協議)が必要です。遺産が銀行預金だけという場合もありますが、その場合でも、銀行所定の用紙に全員の実印による押印が必要となるのが一般的です。したがって、やはり相続人どうしが連絡を取り合うことになるでしょう。
親戚が集まる法事の際に話し合いを持つこともありますが、被相続人が亡くなられてから時間が経過している場合はそういう機会も期待できないので、代理人を立てて、話し合いのきっかけを作ることが多いでしょう。
話し合いの結果は、遺産分割協議書としてまとめるのが一般的です。遺産分割協議の結果、ご自身が不動産を取得され、その名義移転(所有権移転登記)を行う際には、遺産分割協議書が必要となります。
当事者の話し合いがまとまらない場合や、協議がうまく進まない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、裁判所で話し合いを行うことになります。調停では、調停委員が裁判官とも協議しながら、双方の意見を聞きつつ調整をはかってくれます。
調停によっても、合意に至ることができない場合は、家庭裁判所の審判官(裁判官)の判断(審判)に委ねることになります。
相続に関する手続の流れ
相続に関するその他の問題
- 「相続を放棄したい」
- 「被相続人の事業のために尽くしたのだから、相続の際に考慮してもらいたい」「被相続人の介護をしてきたのに、報われないの?」(寄与分)
- 「あの人は亡くなる前にたくさん援助してもらったはず。相続のときには考慮されないの?」(特別受益)
- 「もしものときのために、遺言書を作っておきたい」「ワープロで作ってしまってもいいの?」(遺言の作成)
- 「曾おじいさん名義の不動産があるのですが・・・」(相続登記)
- 「ある人にお金を貸していたが、その人が亡くなってしまった。相続人はみなさん相続放棄してしまったようです。どうしたら貸したお金を回収できるでしょうか?」(相続人不存在)
- 「身寄りがない人だったので、最期の面倒を看させてもらいました。私も何か権利があるのでしょうか?」(特別縁故者)
- ①「相続を放棄したい」
- →被相続人に多額の負債がある場合など、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産(負債)も引き継ぎたくないときは、家庭裁判所に「相続放棄の申述」を行います。相続放棄の申述期間は自己のために相続の開始があったことを知ったときから原則として3ヶ月以内です。
- ②「被相続人の事業のために尽くしたのだから、相続の際に考慮してもらいたい」
「被相続人の介護をしてきたのに、報われないの?」(寄与分)
- ⇒被相続人の事業に貢献したり、被相続人の療養看護につとめるなどして、被相続人の財産の維持や増加に特別の寄与をした相続人がいる場合、その「寄与分」を相続分に加えるよう求めることができます。
「寄与分」があるかどうか、また、その割合については、相続人間で協議しますが、その協議がうまく進まない場合は、家庭裁判所が定めることになります。
- ③「あの人は亡くなる前にたくさん援助してもらったはず。相続のときには考慮されないの?」(特別受益)
- →被相続人から遺贈(遺言によって財産をもらう)を受け、または、被相続人の生前に、婚姻・養子縁組、独立のために贈与を受けた相続人(特別受益者)がいる場合、それを考慮しないと、相続人同士が不公平になることがあります。
このような場合、これらの贈与額を、亡くなられたときに存在する財産に加えてその全体をベースに相続分を算定し、算定された相続分から贈与額を差し引いて、特別受益者の相続分とすることになります。
- ④「もしものときのために、遺言書を作っておきたい」「ワープロで作ってしまってもいいの?」(遺言の作成)
- →自分の財産を、誰にどのように取得して欲しいかを生前に決めておくのが遺言の主な内容です。「○○の面倒を看てくれた場合に遺贈する」といった条件を付けることもあります。
また遺言書を作成しても、相続人が複数いる場合や特定の相続人に不利な内容が含まれていると、遺言の実現が難航する場合もあります。相続争いをなるべく回避できるような内容を検討するとともに、あらかじめ「遺言執行者」を指定しておくことが考えられます 。
自筆で全文を書く「自筆証書遺言」や「公正証書遺言」などがあり、遺言の方式は決められています。せっかく作成した遺言が無効とならないよう注意が必要ですので、作成の際には、是非ご相談下さい。
- ⑤「曾おじいさん名義の不動産があるのですが・・・」(相続登記)
- →亡くなられた方が不動産を所有しておられた場合は、なるべく早めに名義変更(所有権移転登記)にとりかかりましょう。
なぜなら、被相続人が亡くなられてから長く経過すると、その間に相続人自身が亡くなっていることもあり、その場合は、相続人の子どもや孫との協議が必要となります。結果的に、権利関係が複雑となり、名義変更のために多くの方同意を要するため、時間も費用もかかってしまうためです。
- ⑥「ある人にお金を貸していたが、その人が亡くなってしまった。相続人はみなさん相続放棄してしまったようです。どうしたら貸したお金を回収できるでしょうか?」(相続人不存在)
- →被相続人に配偶者や子ども、親や兄弟姉妹すらいない場合、または、相続人がすべて相続放棄をしてしまった場合など、「相続人が存在しない」という事態が生じます。
このままでは、被相続人に対してお金をかしていたような人(債権者)は、貸付金の回収や不動産に設定した担保権を実行することができません。
このような場合、債権者は家庭裁判所に「相続財産管理人」を選任してもらって、手続を進めていくことになります。
- ⑦「身寄りがない人だったので、最期の面倒を看させてもらいました。私も何か権利があるのでしょうか?」(特別縁故者)
- →相続人以外の人が、被相続人と生計を同じくし、または、療養看護につとめていたような場合があります。⑥のように相続人不存在の場合は、被相続人と特別の縁故があった人(特別縁故者)は、相続財産の分与を請求することができます。
この場合も「相続財産管理人」の選任を経て、手続を進めていくことになりますが、その方が特別縁故者に当たるかどうか、どの程度の財産を分与すべきかについては、家庭裁判所が判断します。

